ワークショップで体験する”Gamification”開催報告(前編)

 12月3日に神田にてセミナー『ワークショップで体験する”Gamification”』を開催いたしました。

当日の内容・様子についてご報告させていただきます。

書いていたらとても長くなりましたので、本ブログ始まって以来の前・後編に分けてお送りいたします(笑)

 

 セミナーの内容は第1部がGamificationとその周辺理論の解説。2部がマーケティングにおけるGamificationの事例紹介と企画ワークショップ、3部が教育におけるGamificationの事例紹介と企画ワークショップという3部構成で開催されました。

 このセミナーは私の大学の同期で、Allabout enFactoryでギフトショップサイトのマネージャーをしている清水正樹さんと企画段階から共同で作成しました。

 

第1部では私の方から、「ゲームではないアプリケーションやWebサイトなどにゲームのメカニズムを利用する」Zichermannの”Gamification”と「現実の社会や未来をゲームを活用して良くしていく」McGonigalの ”Gamification”という2つのGamificationがあるという説明をし、おそらく共通で使用されているであろう、ゲームに関連する理論の紹介をしました。

 

詳細はスライドの方を見て頂ければと思いますが、“ゲームの良さ”に関連する6つの心理学の知見を紹介しました。(参考文献表も後編と一緒に後日まとめて公開したいですね。)

 

1. 人はゲームをするとき没頭している

⇒フロー理論(チクセントミハイ)

 

2. 人はゲームで自信をつけている

⇒自己効力感の理論(バンデューラ)

 

3. 人はゲームを自発的にしている

⇒内発的動機付けと自己決定理論(Deci,Lepperなど)

 

4. ゲームで人と人とは繋がっている

⇒ソーシャルサポート(テイラーなど)とグループジーニアス(ソーヤー)

 

5. 人はゲームによって幸せになる

⇒ポジティブ心理学(セリグマンなど)

 

 他に、ゲームの楽しみ方の差の問題として、YeeやKlug&Schellのプレースタイルとプレーモチベーションの研究。ゲームジャンル選好に関する男女差の研究などを紹介しました。

 

 

 今回、このプレゼンテーションをするに当たって、ゲームに関連するといわれている心理学の理論をまとめ、理論の総復習を行いました。その中から、2つのゲーミフィケーションに共通しそうな理論をいくつかピックアップするという形を取ったため、泣く泣く捨てた理論が山のようにあります(ポジティブ心理学/学習理論/コミュニティ関連の心理学/職場学習論などはほとんど捨てました)。機会があれば教育/学習に絞って深くまとめてみたいですね。

 

 さて、今回このようにゲーミフィケーションとは何なのかということを自分なりに追求した結果、見えてきたことがあります。それは、世間で言われているZichemmanのゲーミフィケーションには行動科学の影響が色濃くあるということです(以下のゲーミフィケーションはZichermmanのものを指します)。Gamification-wikiの“ゲームメカニズム”には動機付けや報酬の与え方、罰の使い方など行動科学で積み重なってきた知見が関連理論としてよく見られます。また、人の心はどうすれば流されるのかという社会心理学の影響(ex.認知的不協和理論)も一部に見られます。

 

 正直にいって、私はこのような流れには危険な傾向があると思います。(もちろん、行動科学や社会心理学をけなしているわけではありません。僕はその両方とも好きです。)

 

 「○○すれば、人はゲームをやめられない」とか、「○○すれば、人はためらわずに課金をする」とかという話は、結局人をどのようにすれば都合良くコントロールできるのかという話を表裏一体です。先日、シリアスゲームセミナーで、東京大学の藤本先生からシリアスゲームは“社会的な良さ”を前提にしているが、ゲーミフィケーションにはそれがないという話がありました。

 

 ゲーミフィケーションがなんの“良さ”も前提に置かず、ただ人の欲望につけ込むことを目指すのであれば、それはとても悲しく、危険なことです。「ゲームというチョコレートを被せた、人の欲望につけこむ洗脳薬」は、これまでのセールス手法よりも見かけが楽しい分だけ回避しづらいでしょう。

 

 私はゲーミフィケーションが「本当に人を楽しくし、その結果、商品や会社を好きになって貰うため」に使われ、ゲーミフィケーションが“ゲーム”そのものの評判を落とさないことを強く願います。また、マクゴニガル的なゲーミフィケーションの認知度も高めていくように個人として取り組みたいですね。マクゴニガル的ゲーミフィケーションを教育にどう生かすかに関しては、16日に東京大学で行われるワークショップの方で議論が出来ればなと思っています。(本WSですが、申し訳ないことに多数の方にご応募頂きまして、現在キャンセル待ちが10名以上いらっしゃいます。現在は参加希望は受け付けておりませんのでご了承ください。)

 

 言いたいことは言い切ってしまった気もしますが(笑)、また次週あたりに私が担当した第3部の内容をご紹介したいと思います。