たまには社会的ジレンマの話でも…

みなさま、こんにちは。
年明けから早くも20日ほど経過してしまいましたが、
今年最初のブログを書きたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

さて、私の専門はゲームを利用した教育や学習ですが、
「社会的ジレンマ」を体験して学習するゲームを修士・博士研究として進めています。
これまで一度もこちらのジレンマの方について語ったことがないように思えましたので、
今日はこの「社会的ジレンマ」について書いてみます。
(純粋な?社会心理学者というわけではありませんので、

もし間違いがありましたらスミマセン…。)

社会的ジレンマというのは固い定義でいうと
1. 集団の成員は、それぞれ協力または非協力のどちらかを選択できる。
2. 各成員にとって、非協力の選択は、協力の選択よりも大きな利益をもたらす。
3. しかし、全員が非協力を選択した際に得られる利益は、全員が協力を選択したときに得られる利益より小さい。
(Dawes,1980)
ということです。

もう少し柔らかくいうと、
「協力してもしなくてもいいし、しない方が自分にとっては得なんだけど、みんなが協力しないと困ったことになる」
というような状況です。

ここで、ある中学校の栽培委員を想定してみます。
この委員では生徒が植物を尊ぶ気持ちを養うために、
担当制では無く「その日にできる人が植物の世話をする」というルールになっています。
ただし、植物を枯らしてしまった場合、委員全員が先生に怒られ内申は悪くなります。

この状況においては、
「世話をするかどうか(協力するか)」を選択でき、
「世話をしない方が自分にとっては楽(得)であるが」
「みんなが協力しないと悪い結果(内申の悪化)」につながるという点で社会的ジレンマがあるといえます。

この委員会には、A~Eくんの5人が所属しており、
Aくんは誰も世話をしなそうな時は必ず世話をする協力的な人物で、
B~Dくんは協力したり、しなかったり…という人物であり、
Eくんは、めんどくさがりで基本的には協力しない人物であるとします。
(こんな状況世の中には沢山ありますよね?)

もしあなたがAくんで、自分だけが不利益を被っている状況を改善したいと感じた場合、
いったい、どうしたら良いでしょうか??
完璧な答えはありませんが、良かったら考えてみてください。








1つの選択としては、先生に働きかけて担当制を導入するという方法があります。
委員会の教育目標は達成できなくなりますが、とりあえずみんなもやらなければいけないという日を作ることで、
協力を引き出すことができるかもしれません。
(この場合、制度の導入によるコストや、「2次的ジレンマ」という問題が発生しますが今回は割愛します。)

他の選択肢としては、B~Eくんに協力の重要性を訴えかけることで、
協力行動を取ってもらうという方法もあるかもしれません。
ただ、この方法が「人の心を動かす」方法であるため、困難なことは何となくお察し頂けると思います。

委員会の制度を変えて問題を解決する方法を「構造的方略」、
個人の心に訴えかけて協力行動を取って貰う方法を「心理的方略」と呼びます。
(詳しく知りたい方は下記の本などをお読みになられると良いかもしれません。)

 

リンク:社会的ジレンマの処方箋

リンク:人はどのような環境問題解決を望むのか

 

どちらかということではなく、問題を解決するにはこの双方が重要です。

先に書きましたとおり、「こうすれば良い」というような絶対の解はこの問題にはありませんが、
一つ重要なことがあります。

それは、あなたがAくんのような立場だった場合、
「いつか彼らも分かってくれる」と考えて、

一方的に協力行動を取ることでは問題は解決しないということです。
世の中の一定数の人(Eくん)は、「協力しない」ということが知られており、

そういう人に「搾取」される構造を作るだけです。
(罰ゲームがあるジャンケンで、あなたが絶対に「グー」しか出さないことが知られていたら、

相手はどうするでしょうか?)

理想をいえば、きちんと協力しない場合のデメリットについて全員が認識をし、
「協力する方が実は合理的である」という「社会的な賢さ」が組織で広まるように、
努力をする…ということが大切なのかな…と思います。
(もちろんこれも苦難の道ですが…)

特にオチはないのですが、たまには社会的ジレンマの話でもしてみるか、ということで。